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新型コロナによる傷病手当申請書に医師の証明が不要になりました

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目次

新型コロナウイルス罹患による傷病手当金申請に関して、厚生労働省より健康保険組合等へ新しい通達が出ました。

この通達では、新型コロナウイルス感染症の急激な感染拡大の影響を考慮し、令和4年8月9日以降 に申請された傷病手当金に関して、通常時であれば必須とされている医師の意見欄の記載は不要とし、代わりに事業主が療養のため労務に服さなかった旨を証明することで、傷病手当金が支給されることになりました。

今回は、傷病手当金の申請に関する変更点について詳しく解説をします。

傷病手当金の申請に関する変更点


実は、今回の通達が出される以前も、「やむを得ない場合」は事業主の証明だけで傷病手当金を支給がされることになっています。

今回の通達前後の主な変更点は次の通りです。

(変更前)

やむを得ない理由により医療機関への受診を行わず、医師の意見書を添付できない場合には支給申請書にその旨を記載し、事業主からの当該期間、該当する従業員が療養のため働けなかったことを証明する書類を添付することにより、健康保険組合等でそれが認められれば傷病手当金を支給する。

(令和4年8月9日以降)

特段、やむを得ない理由がなくても、医師の意見書に代わり、事業主が当該機関、該当する従業員が療養のため働けなかったことを証明する書類を添付することにより、健康保険組合等でそれが認められれば傷病手当金を支給する。

つまり、今回の通達によって、これまで必要とされていた「やむを得ない理由」がなくても、傷病手当金の支給を受け取れるようになったのです。

傷病手当金の申請に医師の証明が不要になった理由

今回、特例により医師の証明が不要になった理由は、日々のニュースにある通り、2022年7月以降全国各地で新規感染者数が増加に転じ、多くの地域において急速に感染が拡大しているためです。

医療機関には大きな負担がかかり、医療の提供に支障が出てくることが考えられます。

そのため政府の各機関では、医療機関の負担軽減を図ることが急務とされているのです。

新型コロナウイルス感染症対策本部においては、7月 29 日には「病床、診療・検査医療機関のひっ迫回避に向けた対応」、8月4日に は「オミクロン株の特徴に合わせた医療機関や保健所の更なる負担軽減への対応」が決定されました。

このような点から、現行の感染急拡大に対応する当面の間の運用として、傷病手当金の申請に関し、医療機関への受診がなくても申請を認めることになりました。

各健康保険組合では対応開始

既に通達は、2022年8月9日に各保険者(健康保険組合等)に到達しています。

SATO社会保険労務士法人では、各健康保険組合に対して、独自にヒアリング調査を実施しました。

その結果、各保険者ともこの通達に従い、医師の意見書がなくても、コロナウイルス罹患により療養のため仕事を休んでいる期間に関して、傷病手当金を支給する予定との回答を得ています。

ただ、この特例に基づいて傷病手当金の申請をする際は、念のために、各健康保険組合等に確認をするようにしましょう。

令和4年8月9日以降の傷病手当金のポイント

令和4年8月9日以降の傷病手当金申請のポイントは下記の5つです。

  1. コロナウイルス罹患による申請であること
  2. 2022年8月9日以降に申請されたこと
  3. 医師の意見書は不要となること
  4. 事業主が労務に服していないことを証明すること
  5. 保険者(健康保険組合等)が認めること

尚、最終的には保険者(健康保険組合等)の判断になりますので、事業主の証明に関して、特別な添付書類が求められるケースなどもあるかと思います。

申請をする際は、ご自身で加入の保険者に確認をお願いします。

傷病手当金の基本知識のおさらい


傷病手当金の申請は、それほど発生する業務ではないため、担当者によっては申請の流れがよくわからないという方もいるのではないでしょうか。

突然、傷病手当金申請の業務が発生しても困らないように、基本的な流れについて頭に入れておきましょう。

傷病手当金申請の要件

傷病手当金は病気やケガを負った従業員であれば、誰でも申請できるというわけではありません。

傷病手当金を受給するには、次の要件に該当することが必要です。

  1. 業務外の事由による病気や怪我の療養で休むこと
  2. 仕事に就けないことを医師が証明してくれること
  3. 4日以上休むこと
  4. 休んだ期間、給与の支払いがないこと

傷病手当金の受給期間は?

傷病手当金の受給期間は、支給が開始された日から通算して1年6ヵ月となります。

通算して1年6ヵ月を超えると、病気や怪我が治らなく職場復帰できなかったとしても支給は停止されます。

尚、一度傷病手当金を受給した場合でも、以前と異なる別の病気や怪我が原因で休む場合は、期間は通算されなく、新しい申請となるため職場復帰するまで最大で通算1年6ヵ月受給することが可能です。

傷病手当金の受給金額は?

傷病手当金の受給金額は、健康保険の加入期間が12ヵ月以上あるかどうかで大きく異なります。

  1. 健康険加入期間が連続して12ヵ月以上ある場合
    「12ヵ月間の標準報酬月額の平均」÷「30日」×3/2 =「1日当たりの支給金額」
  2. 健康保険加入期間が連続して12ヵ月未満の場合
    「12ヵ月間の標準報酬月額の平均」に代わって、以下の2つのパターンの少ない方を使って計算をします。
    ①加入期間中の標準報酬月額平均額
    ②会社が加入している保険者(健康保険組合等)の平均標準報酬月額

つまり、①が②より少なければ①の金額で計算され、①が②より大きければ②で計算されますので、給与が高かったとしても1年以上継続して加入していない場合は、傷病手当金の受給金額は低くなる場合がありますので、ご注意ください。

従業員の傷病手当金の手続きに関する相談は社労士がおすすめ

従業員の傷病手当金に関するお手続きや届出に関する相談は、社労士が便利です。

傷病手当金の手続きは、普段あまり発生する業務ではないため、詳しくわからないという経営者や担当者の方がいるかと思います。

また、従業員の多い企業では、通常の業務が忙しく、手続きの対応ができないというケースもあります。

このような場合、社労士に相談をすれば、会社の事情に合わせて最適なアドバイスをしてくれるうえ、手続きの代行までしてくれるので社内業務の効率化を図ることが可能です。

従業員の傷病手当の手続きでお困りの事業者様は、社労士の検討をおすすめします。


失敗しない!社労士の選び方のポイントを解説|SATO社会保険労務士法人

SATO MAGAZINEのコラム詳細ページです。SATO MAGAZINEとは、日本最大の社労士法人『SATO社会保険労務士法人』が運営するオウンドメディアです。社会保険(健康保険、厚生年金)や労働保険(雇用保険、労災保険)の各種手続きや必要書類の書き方、最新の法改正等に関する情報を日々発信しています。

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まとめ

新型コロナ感染拡大の影響を考慮し、令和4年8月9日以降、傷病手当金の申請書について、医師の証明が不要となりました。

これまで必須とされていた医師の証明に代わって、事業主が労務に服していないことを証明することで申請が可能になったのです。

ただ、健康保険組合によっては、事業主の証明に関して独自のルールを設定しているケースもあります。

そのため、実際に申請をする際は、事前に健康保険組合に確認することを忘れないようにしましょう。

お気軽にお問い合わせください。