「健康保険 傷病手当金支給申請書」書き方や手続きをわかりやすく解説
健康保険の被保険者が、ケガや病気で仕事ができなくなってしまった場合、「傷病手当金」が支給される可能性があります。
被保険者が傷病手当金を受け取るためには、「健康保険 傷病手当金支給申請書」を作成し、協会けんぽ、または健康保険組合に提出しなければなりません。
最近では、新型コロナに係る傷病手当金の申請について、特別な扱いが認められています。
そこで今回は、会社の担当者や経営者の方に向けて、傷病手当金の手続きや、「健康保険 傷病手当金支給申請書」作成のポイント等について、解説をしたいと思います。
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そもそも傷病手当金とは?
傷病手当金とは、従業員(健康保険の被保険者)が業務外でケガや病気をして、仕事ができなくなったときに、健康保険から支給される給付金のことをいいます。
仕事ができなくなった被保険者や、その家族の生活を守ることが傷病手当金の目的です。
よく似た名前の制度として雇用保険の「傷病手当」があります。
雇用保険の傷病手当は、退職後のケガや病気により就職活動等ができなくなった場合に支給される手当であって、健康保険の傷病手当金とは全く異なる制度なので、間違えないようにしましょう。
傷病手当金の手続き方法
被保険者が傷病手当金を受け取るためには、会社が協会けんぽ等に「健康保険 傷病手当金支給申請書」を提出する必要があります。
健康保険 傷病手当金支給申請書の手続き内容は下記の通りです。
必要書類 | 健康保険 傷病手当金支給申請書 |
目的 | 傷病手当金の給付を受ける |
提出先 | 事業所所在地の協会けんぽ都道府県支部、 または健康保険組合 |
提出期限 | 被保険者が労務不能になった日の翌日から2年間 |
添付書類 | 外相の場合は「負傷原因届」 第三者による傷病の場合は「第三者の行為による傷病届」 マイナンバーを記入した場合は「本人確認書類添付台帳」 (いずれも2回目以降の申請には不要) |
「健康保険 傷病手当金支給申請書」の提出期限は、就労不能日の翌日から2年間です。
2年を過ぎると傷病手当金は時効により消滅してしまうので、注意しましょう。
なお、組合健保に加入している被保険者の場合、健康保険組合ごとに申請や添付書類等のルールが異なる可能性があります。
組合健保の場合は、事前に健康保険組合に確認するようにしましょう。
傷病手当金が支給されるまでの流れ
傷病手当金が支給される流れは一般的に次の通りです。
- 被保険者が会社に休業の申出をする
- 会社が被保険者に「健康保険 傷病手当金支給申請書」を渡す
- 被保険者が申請書(被保険者記入用)に記入
- 医師が申請書(医療担当者記入用)に記入
- 事業主が申請書(事業主記入用)に記入
- 添付書類と併せて協会けんぽ、または健康保険組合に提出する
なお、医師の意見書が日本語以外の場合には、翻訳文の添付が必要になります。
傷病手当金の支給条件
傷病手当金は、健康保険の被保険者が下記の4つの要件に該当する場合に支給されます。
- 業務外の事由によるケガや病気の療養のための休業であること
- 仕事をすることができない状態にあること
- 待機期間を経過していること
- 休業した期間について給与等の支払いがないこと
傷病手当金は「業務外の事由」によるケガや病気で就労ができなくなった場合に支給される給付金です。
業務中のケガや病気で就労ができなくなった場合については、労災保険の対象となります。
また、休業中に給与等の支払いがある場合、原則として傷病手当金は支給されません。
しかし、業病手当金の額よりも給与が少ない場合には、その差額が支給されます。
傷病手当金を受け取るための待機期間とは
傷病手当金は、業務外のケガや病気等により仕事ができなくなった日から、連続3日間会社を休んだうえ、4日目から支給されます。
この連続した3日間のことを「待機期間」といい、3日間連続で仕事を休んだことを「待機完成」といいます。
待期期間中は療養のため仕事ができない状態にあれば、賃金の支払いがあったかどうかは問われません。
また、法定休日や有給休暇であっても、待機期間に含まれます。
傷病手当金の支給金額
1日あたりの傷病手当金の支給金額は次の計算式によって算出されます。
「傷病手当金の支給開始日以前の継続した12ヵ月の各月の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2」
そのため、1日に支給される傷病手当金の額はざっくりいうと、標準報酬日額の3分の2となります。
標準報酬日額とは、報酬を一定の範囲で区分した金額のことをいい、おおよそ賞与を含まない1日あたりの給与となります。
休業期間中に会社から給与の支払いを受けた場合、傷病手当金は支給されません。
ただし、会社から支払を受けた給与の額が、傷病手当金の額よりも少ない場合は、差額が支給されることになります。
傷病手当金の支給期間
傷病手当金が支給される期間は、支給を開始した日から通算して1年6ヵ月までとなっています。
以前は、傷病手当金の支給期間は、支給開始日から「最長で1年6ヵ月まで」となっていましたが、法改正により令和4年1月1日以降は、「通算して1年6ヵ月」となっています。
そのため、例えば休業途中に一定期間だけ職場復帰し傷病手当金が支給されない期間がある場合、その期間についても繰り越して傷病手当金の支給を受けることが可能です。
ただし、通算化されるのは、同一のケガや病気による傷病手当金です。
新型コロナ感染症も傷病手当金の支給対象です
新型コロナウイルス感染症の影響で仕事ができなくなった場合も、傷病手当金の支給対象です。
具体的には、健康保険の被保険者が、次のいずれかに該当する場合で、その他の支給要件を満たす場合には、傷病手当金が支給されます。
- 新型コロナウイルス感染症「陽性」と判定され療養のため労務に服することができない場合
- 新型コロナウイルス感染症「陰性」または検査未実施であるが、発熱等の自覚症状があるため労務に服することができない場合
新型コロナウイルス感染について陽性と判定された場合には、発熱などの自覚症状の有無を問わず、対象となります。
また、り患後の後遺症によって、仕事ができなくなった場合も、傷病手当金の支給対象にあたる可能性があります。
ただし、新型コロナウイルス感染症が治癒した後に、事業主が感染拡大防止の目的で自宅待機命令を出したような場合は、傷病手当金の対象外となります。
このような、使用者の責めに帰すべき休業については、会社は労働者に対して休業手当を支払う必要があります。
新型コロナに係る傷病手当金の申請は医師の証明が不要
本来、傷病手当金の申請には医師の証明が必要です。
しかし、新型コロナウイルスにり患した場合の傷病手当金の申請については、医師の証明が不要とされています。
これは、新型コロナ感染拡大による医療関係者の負担軽減や、証明書を求めて人が集まることによる院内感染のリスクを避けることが目的です。
医師の証明を省略する場合は、代わりに、事業主が作成した被保険者が就労不能であったことを証明する書類等を添付する必要があります。
ただし、医師の証明を必要としない措置は、あくまで臨時的なものであり、感染状況が落ち着いたら、また医師の証明が必要になると考えられます。
まとめ
傷病手当金とは、被保険者が業務外の事由によるケガや病気で、仕事ができなくなった場合に、健康保険から支給される給付金です。
傷病手当金を受け取るためには、「健康保険 傷病手当金支給申請書」を作って、協会けんぽ、又は健康保険組合に提出しなければなりません。
「健康保険 傷病手当金支給申請書」には、事業主の記入欄だけでなく、被保険者の記入欄や、医師の記入欄もあるので注意しましょう。
最近は、新型コロナの感染拡大により、医師の証明書が不要になるなど、特別な取扱いが認められるケースがあります。
会社の担当者は、申請手続きをしっかりと把握し、従業員がスムーズに傷病手当金を受け取れるように準備をしておきましょう。