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労務関係

残業代は社会保険料の随時改定(月額変更)の対象になる?

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随時改定は、従業員の給料等の変動を社会保険料に反映させるための手続きです。

この手続きは、速やかに行う必要があるうえ、正確に処理をしないと年金事務所から指摘されたり、従業員とのトラブルにつながる可能性があります。

そのため、経営者や人事担当者はこの手続きについてしっかりと理解しておきましょう。

今回は、残業代の変動が随時改定の対象になるのかどうか、についてわかりやすく解説したいと思います。

そもそも随時改定(月額変更)とは?


随時改定(月額変更)とは、報酬の変動を社会保険料に反映させるための制度の1つです。

会社と従業員が負担する社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、標準報酬月額をもとに算出します。

標準報酬月額とは、社会保険料の計算をしやすくするため、基本給や各種手当など従業員が1か月に受け取る報酬を一定の範囲で区分したもののことをいいます。

通常、この標準報酬月額は年に1回見直しが行われ、これを「定時決定」といいます。

しかし、年度更新のみだと、年度の途中に大きな昇給や降給があった場合、その報酬を社会保険料に反映させることができません。

そこで事業主は、従業員の給与等に大きな変動があった場合、年度の途中であっても定時決定をまたずに、標準報酬月額を変更させるための届出を行います。

これが「随時改定」です。

随時改定を行う際、必要となる書類の名前が「被保険者報酬月額変更届」というため、実務上は「月額変更」または「月変」といわれたりします。


随時改定が行われるケース

随時改定は、従業員の給与等に変更があった場合に、標準報酬月額を改定し、その変動を社会保険料に反映させるための手続きです。

ただ、報酬の変動がわずかな場合や、臨時の手当などがあった場合も、随時改定をしなければならないとすると、会社側の手続きの負担が大きくなってしまいます。

そのため、随時改定は給与等が大きく変動した場合など、一定の要件に該当する場合のみに必要とされています。

随時改定の手続き・届出が必要になるのは次の3つの要件をすべて満たす場合のみです。

  1. 昇給や降給などにより固定的賃金に変動があった
  2. 変動月からの3ヵ月間に支給された報酬の平均月額に該当する標準報酬月額と、それまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が発生した
  3. 変動月からの3ヵ月間とも賃金や報酬の支払基礎日数が17日以上であった(短時間労働者の場合は11日以上)

従業員がこれら3つの要件をすべて満たす場合、事業主はすみやかに随時改定の手続きを行わなければなりません。


残業代を変更した場合に随時改定が必要?

残業代を変更した場合、基本的に随時改定は必要ありません。

上述の通り随時改定は、従業員の「固定的賃金」に変動があった場合に必要となる手続きです。

固定的賃金とは、従業員の勤務状況や実績などに関係なく、一定額が継続して支払われる給与・手当のことをいいます。

例えば、基本給や家族手当、住宅手当、役職手当などが固定的賃金に含まれます。

これに対して、能率手当や皆勤手当、病気や休職時の休職手当などは勤務状況によって上下しますので、固定的賃金に含まれません。

残業代についても、従業員の所定外労働・法定外労働の時間数に応じて変動しますので、固定的賃金に含まれません。

そのため、残業代が増えたり減ったりしたとしても、随時改定の対象にはらないのです。

残業代の支給割合に変更があった場合は注意

基本的に、残業代は固定的賃金に該当しないため、残業時間が増減し残業代に変動があったとしても、随時改定の必要はありません。

ただ、残業代の支給割合に変更があった場合は注意が必要です。

法令では、1日8時間・1週40時間を超える労働に対して、事業主は通常の賃金の25%以上、残業が60時間を超える場合には50%以上の割増賃金を支払わなければならない等と定められています。

ただ、法令で定められた支給割合は最低基準であり、会社は就業規則等で独自の残業手当を設定することが可能です。

例えば、1日7時間を超えた場合は25%以上の割増賃金を支払う場合や、1日8時間を超えた場合は30%の割増賃金を支払う場合などです。

このように、会社が定めた残業代の支給割合を変更する場合は、賃金体系の変更といえるので、随時改定の対象になります。

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随時改定をしないとどうなる?

従業員が随時改定の要件を満たした場合、事業主は「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届」を作成し、速やかに管轄の年金事務所に提出をしなければなりません。

届出をしなかったり虚偽の届出をした事業主に対しては、健康保険法等により「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」という罰則が規定されています。

ただ、すぐに手続きをすれば、実際にこれらの罰則が適用されるケースはほとんどありません。

届出の遅れなどを年金事務所から指摘された場合には、遡って処理をしなければならず、大変な手間や時間がかかる可能性があります。


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まとめ


残業代の変動があったとしても、原則として随時改定(月額変更)の対象にはなりません。

随時改定は、基本給や役職手当などの固定的賃金に変動があった場合、これを社会保険料に反映させるための手続きですが、残業代は固定的賃金に含まれないためです。

ただ、残業代の変動であっても、それが賃金体系の変更にあたる場合等は、随時改定が必要になるケースもあります。

随時改定の届出が遅れると、年金事務所から指摘されるだけでなく、従業員が将来受給する年金額にも影響があるなど、労使のトラブルにつながる可能性もあります。

報酬に変動があった場合には、必ず随時改定の必要があるかどうかチェックするようにしましょう。

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