就業規則の変更手続き、手順や必要書類をわかりやすく解説
就業規則は、一度作成したら終わりというものではなく、その後の法改正や会社の状況に合わせて、こまめに変更していくことが必要です。
ただ、就業規則の変更手続きには、ルールが定められており、それに沿った手順で変えていく必要があります。
そこで、今回は就業規則の変更手続きの手順、そして必要書類や注意点などをわかりやすく解説したいと思います。
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就業規則の変更手続きの手順
就業規則の変更手続きは、次の手順で進めるのが一般的です。
- 就業規則の草案を作成
- 従業員に対する説明
- 労働組合または従業員代表から意見聴取
- 労働基準監督署への提出
- 従業員への周知
それぞれの手続きについて、必要書類や注意点などについて解説していきます。
1、就業規則の草案を作成
まずは、就業規則の変更案をまとめた草案を作成します。
就業規則の草案を作成するときは、それが法律に違反していないか注意が必要です。
就業規則が法律に違反する場合は、その違反する部分が無効となってしまうからです。
例えば、労働者の年次有給休暇について、「1年以上雇用された場合に限り付与される」などと就業規則に記載したとします。
しかし、労働基準法では「雇い入れから6か月経過」した場合には、年次有給休暇が付与されることになっているため、就業規則に記載した有給取得条件の6か月を超える部分については、無効となってしまうのです。
労働基準監督署は企業に対して、就業規則の変更を命じる権限をもっているため、違法な就業規則に対しては指導や命令を受ける可能性があります。
また、就業規則が法律に違反していることを理由に、従業員から損害賠償を請求されるケースもあります。
就業規則の草案を作成する際は、法律に違反しないよう、専門家などの意見も取り入れながら作成しましょう。
2、従業員に対する説明会の実施
就業規則の説明会については、法律上の規定はなく、必ず実施しなければならないというものではありません。
ただ、就業規則を変更した場合には、労働組合や従業員代表の意見聴取を行わなければならず、これは労働基準法という法律で定められています。
しかし、突然従業員代表らに意見を求めても、他の従業員が内容を理解していないと、従業員代表も意見を出しにくく、スムーズに手続きがすすみません。
そこで、あらかじめ従業員全体に就業規則をなぜ変更するのか、どのように変更するのか、変更すると何がかわるのか等、わかりやすく説明をしておくとその後の手続きを進めやすくなります。
3、労働組合または従業員代表から意見聴取
労働基準法によって、使用者が就業規則を変更しようとするときは「労働者の過半数で組織する労働組合または、労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない」と定められています。
過半数で組織する労働組合がある企業はごく一部ですので、多くの企業では、労働者の過半数を代表する者(従業員代表)に対して意見聴取をすることになるでしょう。
この意見聴取は、単に従業員側にどのような意見があるのかを確認するためのもので、同意を求める必要もありませんし、意見を就業規則に反映させる必要もありません。
従業員代表らに意見聴取をする際は、意見の内容を記載した書面「意見書」を作成します。
この意見書は、変更届等とともに労働基準監督署に提出する必要があります。
以前は、この意見書について、従業員代表の署名または押印が必要とされていましたが、政府のデジタル化が進む中で、押印廃止となりました。
4、労働基準監督署への提出
従業員代表の意見聴取、意見書作成が終わったら、次の3点を事業場を管轄する労働基準監督署に提出をします。
- 新しい就業規則
- 意見書
- 就業規則(変更)届
意見書と、就業規則(変更)届の2つについて、決まった形式はありませんが、事業場の名称や所在地など一定の内容を記載することが求められています。
労働局のホームページから様式をダウンロードできるので、これを参考に作成するとよいでしょう。
複数の事業場がある場合、原則としてそれぞれの事業場ごとに提出しなければなりません。
ただし、変更前後の就業規則が同一の内容であること、すべての事業場の就業規則の部数を提出することなど、一定の要件を満たした場合には、本社でまとめて提出をすることが可能です。
5、従業員への周知
就業規則の変更手続きは、労基署への届出だけでなく、従業員への「周知」をすることで、はじめて効力を有します。
適切に周知が行われていない場合、就業規則の変更は効力を有しないので注意が必要です。
周知は、どんな方法でもよいというわけではなく、法令によって次の3つのいずれかで行わなければならないとされています。
- 常時各事業所の見やすい場所に掲示し、または備え付けること
- 書面を従業員に交付すること
- パソコン等にデジタルデータとして記録したうえで、従業員がいつでもアクセス閲覧できるようにすること
ざっくりいうと、「従業員が見たいと思ったときはいつでも見られる状況にあること」が必要です。
そのため、鍵付きのキャビネットの中にしまってある場合や、一部の従業員しか知らない場所に置いてある場合は、周知があったとはいえず、就業規則は効力を有しません。
一般的には、改定後の就業規則を全従業員に配布する、社内のイントラネットに掲示する、食堂など誰でも出入りする場所に掲示しておく、等の対応がとられています。
まとめ
就業規則の変更手続きは次の手順で進めていくのが一般的、かつ効率的です。
- 就業規則の草案を作成
- 従業員に対する説明
- 労働組合または従業員代表から意見聴取
- 労働基準監督署への提出
- 従業員への周知
ただし、それぞれに注意しなければならないポイントがあり、ルールを守らないと、就業規則自体が無効になってしまう可能性もあります。
担当者はしっかりと注意点を把握し、改定された就業規則が社内で適用されるよう、注意しながらすすめていきましょう。
就業規則の変更手続きについて、不明点やご質問がありましたら、是非SATO社会保険労務士法人までご相談ください。