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労務関係

就業規則の意見書は押印廃止、変更届の手続き・注意点

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従業員が10人以上の会社では、就業規則を作成し管轄の労基署に提出をする必要があります。

ただ、就業規則は一度作ったら終わりというものではなく、法改正や会社の状況などに応じて、こまめに見直し、柔軟に変更する必要があります。

就業規則の変更をする際は、従業員代表らの意見を聞き、「意見書」を作成しなければなりません。

この意見書について、以前は従業員代表の署名または押印が必要でしたが、近年の押印廃止の流れを受け、意見書についても押印廃止となりました。

今回は、押印廃止された意見書を作成する際のポイント、変更届の手続きの流れなどについて解説したいと思います。

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就業規則の意見書は押印廃止されました


就業規則を作成・変更したときは、管轄の労働基準監督署に届出が必要です。

このとき、就業規則と一緒に、労働組合または従業員代表の「意見書」を添付します。

この意見書について、依然は従業員代表らの署名または押印が必要でした。

しかし、行政手続きデジタル化および効率化を図るために、申請書類の多くが押印廃止となる中で、就業規則の意見書も令和3年4月1日に押印廃止となりました。

そのため、就業規則の届出をする際、従業員代表に対して意見書の署名や押印を求める必要はありません。

ただ、誰が作成したものか判断するために、記名は必要となるので注意しましょう。

ちなみに、署名とは本人が自署(自分で書いて署名すること)、記名とは署名以外の方法で名前を記載することをいいます。

パソコンで意見書を作成する場合、従業員代表の名前を氏名欄に入力すればよいこととなります。

就業規則の意見書に決まった形式はありません

何度か意見書の提出をしている会社の担当者であれば、既にご存知かと思いますが、意見書に決まった形式はありません。

労働局のHPなどから様式をダウンロードできるので、これをもとに、自社にあった意見書を作成するとよいでしょう。

ただ、形式は自由ですが、意見書には下記の内容が記載されている必要があります。

  • 会社名と代表取締役の氏名
  • 従業員代表等が意見を求められた日付け
  • 就業規則に対する従業員代表の意見
  • 労働組合の名称または従業員代表者の氏名
  • 従業員代表者を選出した方法

意見は具体的に記載しましょう

意見書には、従業員代表などの意見を記載する必要があります。

これは、就業規則に対する意見がない場合も同じです。

意見がない場合は、「特になし」「就業規則に意見はありません」などと記載します。

意見がある場合には、就業規則のどの部分にどのような意見があるのか、具体的な記載が必要です。

例えば、「次の追記が必要であると考えます。〇条、就業時間は午後6時とする。〇条、時間単位の年次有給休暇制度」などです。

従業員の選出は民主的な方法でないといけません

従業員の選出方法については、民主的な方法でなければなりません。

例えば、「投票」「挙手」「回覧」などです。

このときは、従業員代表を選出する目的や、立候補者の氏名などを明らかにしたうえで、行う必要があります。

使用者側が指名したり、不当に圧力をかけた場合などは、民主的な方法とはいえません。

また、選出手続きはアルバイトやパート従業員など、名称を問わず全ての労働者が参加しなければなりません。

一部の労働者しか参加していない中での選出は、民主的な方法ではありません。

民主的な方法で選ばれていない従業員代表による意見書は無効であり、結果的に、就業規則も無効になる可能性があります。

選出方法についてはよくチェックするようにしましょう。

就業規則の変更届と手続きの流れ

就業規則の変更手続きの流れは基本的に次の通りです。

  1. 就業規則の草案を作成
  2. 従業員に変更の内容や理由を説明
  3. 従業員代表から意見を聴取し意見書を作成
  4. 労働基準監督署へ提出
  5. 従業員に対して周知

労働基準監督署に提出する書類は、次の3点です。

  1. 変更した就業規則一式
  2. 従業員代表者の意見書
  3. 就業規則(変更)届

就業規則(変更)届は、意見書と同様に、決まった形式はないので、労働局のホームページなどからダウンロードして使用することも可能です。

就業規則(変更)届は、就業規則の変更点などを明確にするものです。

全面改訂など変更箇所が多い場合には、個別に記載をする必要はなく、「全面改訂」と記載し、就業規則一式を提出すれば足ります。

就業規則を不利益変更する際の注意点


基本的には上記の流れで、就業規則の変更手続きが可能ですが、不利益変更をする場合は、原則として従業員の同意が必要となるので注意しましょう。

例えば、業績悪化などを理由に家族手当を廃止する場合、休職制度を廃止する場合、昇給を停止する場合などは、従業員に対する不利益変更となります。

この場合は、上記の手続きに加えて、労働組合または従業員の個別の同意が必要となります。

この点について、従業員代表者が同意すれば足りると考えている担当者がいますが、これは誤りです。

そもそも、従業員代表者は、就業規則の変更手続きに必要とされているにすぎず、各従業員の労働条件を自由に決める権限を持っていないからです。

労働組合と合意ができた場合は、労働協約を締結し、その内容で就業規則を変更します。


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まとめ

令和3年4月、政府のデジタル化促進などを理由に、就業規則の意見書が押印廃止されました。

ただ、従業員代表等の記名は必要なので注意しましょう。

就業規則の変更をする際は、新しい就業規則、意見書、変更届の3つを作成し、管轄の労基署に提出をします。

ただ、就業規則の内容が従業員に対する不利益変更となる場合は、各従業員または労働組合の同意が原則として必要となる点に注意しましょう。


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