就業規則の周知義務違反をするとどうなる?罰則は?
従業員が10人以上の会社は必ず就業規則を作成しなければなりません。
そして、就業規則を作成した会社はそれを従業員に対して周知しなければならず、これを怠ると周知義務違反になってしまいます。
今回は、会社が周知義務違反をした場合にどうなるのか、また、違反しないためにどのように周知するべきか、注意点などを踏まえて解説をします。
就業規則の周知義務って何?
労働基準法によると、会社が就業規則を作成したり、変更したときは、それを管轄の労働基準監督署に届出をし、さらに職場の従業員に対して「周知」させなければならないとされています。
これを、就業規則の周知義務といいます。
就業規則は、従業員への周知がされていないと、効力を生じません。
たまに、労基署に就業規則を提出をすれば、それで手続きが終わりだと考えている経営者の方や、担当者の方がいるので、気をつけましょう。
就業規則の周知義務違反をするとどうなる?
就業規則の作成や改定をした場合、会社には従業員に対する就業規則の周知義務が発生します。
では、この周知義務に違反した場合、会社はどうなってしまうのでしょうか。
周知義務違反には罰則があります
就業規則の周知義務は、労働基準法という法律で定められた会社の義務です。
そのため、会社が周知義務を怠った場合、労働基準法違反となり、ペナルティや罰則が科せられます。
周知義務違反が見つかった場合、まずは、管轄の労働基準監督署による立ち入り調査や行政指導、是正勧告を受けるのが一般的です。
ただし、違反の程度が重く悪質と判断された場合には、労働基準法120条によって、30万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
就業規則が無効になります
周知がされていない就業規則は原則として無効です。
そのため、就業規則に記載されているルールが労働者に適用できない可能性があります。
例えば、懲戒の基準が就業規則に記載されていたとしても、それが周知されていない場合、これを労働者に適用することができず、場合によっては従業員に対する懲戒処分ができなくなってしまう可能性があるのです。
むしろ逆に、無効な就業規則に基づいて、不当な処分を受けたとして、従業員から損害賠償を求められるケースも考えられます。
このように、就業規則の周知がされていないと、さまざまなトラブルにつながる可能性があるので、注意しましょう。
就業規則ってどうやって周知するの?
就業規則の周知義務違反に対しては、ペナルティや罰則の可能性があるとお伝えしました。
では、どのように周知すればよいのでしょうか。
実は、周知の方法についても、法令で定められています。
法令では、周知は次の3つの方法のいずれかによらなければならないとされています。
- 常時各事業所の見やすい場所に掲示し、または備え付けること
- 書面を労働者へ交付すること
- PC等の機器にデジタルデータとして記録し、労働者がいつでも見れるようにすること
それぞれ、少し詳しく見ていきたいと思います。
事業所の見やすい場所に掲示し、または備え付けること
休憩室や食堂など、従業員であれば誰でも出入りすることのできる場所に、掲示または備え付けます。
従業員であれば誰でも立ち入りができることが重要なので、セキュリティが高く、限られた従業員しか立ち入りができないような部屋等に掲示または備え付けても、周知とは認められません。
また、見やすい場所であることが必要となるため、会社の重要書類などと一緒に鍵のかかる棚や金庫にしまっておく場合も、周知にあたらないので注意しましょう。
ここでいう事業所とは、支店や工場などそれぞれの就業をする場所のことをいいます。
そのため、事業所が複数ある会社では、それぞれの事業所に就業規則の掲示や備え付けが必要になるので忘れずに行いましょう。
書面を労働者へ交付すること
就業規則のコピー等を各従業員に渡すことです。
ただ、就業規則を渡しただけでは、内容がよくわからないという従業員もいるかもしれないので、簡単にまとめた資料などと一緒に渡すとより理解してもらいやすくなります。
また、就業規則の周知義務とは、単に従業員に就業規則を見せることで足ります。
そのため、社外への持ち出しを制限したり、複製を禁止することは周知義務違反にあたらないので、必要があればルールを設けるとよいでしょう。
PC等の機器にデジタルデータとして記録し、労働者がいつでも見れるようにすること
最近は、デジタル化の促進により、この方法により周知を行う企業が増えてきました。
よくあるのは、社内イントラネット等に就業規則を設置するケースです。
ただ、従業員であれば誰でも見たいときに見えることが必要となるので、閲覧権限が設定されていて、例えばパートやアルバイト従業員は閲覧不可になっている場合は、周知と認められない可能性があるので注意しましょう。
また、社内サーバーや、セキュリティ対策など、一定の準備が必要になるという点についても注意が必要です。
まとめ
就業規則は、作成し労働基準監督署に届出をしただけでは効果がありません。
従業員へ周知をすることで、はじめて、会社のルールとして効力を生じます。
周知の方法については、法令によって具体的に定められており、会社が自由に周知すればよいというものではありません。
適法な周知方法でないと、周知義務を果たしたことにならない可能性があるので注意しましょう。
周知義務に違反した場合、労基署から指導・是正勧告を受けたり、罰則が科せられる可能性があります。
さらに、周知がされていない就業規則は無効となる可能性があるため、就業規則に基づいた処分も無効になってしまいます。
会社の経営者、担当者としては、どのように就業規則の周知をすればよいか理解したうえで、実践しましょう。
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