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従業員の産休・育休申請を会社は拒否できる?

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帝国データバンクが2022年9月におこなった「人手不足に対する企業の動向調査」によると、9月時点における正社員の人手不足を感じている企業の割合は50.1%と、半数の企業が人手不足を感じていることがわかります。

多くの企業が人手不足を感じている中、従業員や従業員の家族の妊娠が判明し、おめでたいムードの半面、長期間休まれることに対してマイナスのイメージを持つ会社も少なくないと思います。

産休・育休取得に対して難色を示す会社では、従業員から産休・育休の申請があった場合、会社は拒否することができるのでしょうか。

わかりやすく解説していきます。

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そもそも産休・育休とは?


産休・育休の制度について、まずは解説していきます。

産休とは「産前産後休業」を指し、「労働基準法第65条」で定められた、出産のための休業制度のことです。

産休は、本人の請求により与えられる「産前休業」と、取得が義務付けられている「産後休業」に分けられ、正社員・パート等の雇用形態に関係なく、出産する本人(=女性)であれば誰でも取得可能な休業制度です。

そのため、男性は産休を取得することはできません。

ちなみに、勤続年数も関係なく取得することが可能なため、入社1年未満でも取得することが可能です。 

次に育休についてです。

育休とは「育児休業」を指し、「育児・介護休業法」により定められた、条件を満たした人が取得する権利のある休業制度のことです。

育休は、子どもを育てる男女労働者が会社に申し出をすることで、子どもが1歳になるまでの間、子どもを育てるために法律に基づいて休業することが可能です。

産休・育休を取得するための条件とは?

産休には条件がありません

上記の通り産休は、雇用形態(正社員・パート等)や勤続年数に関係なく、出産する本人が取得可能な休業制度です。

また、たとえ産休の制度を制定していない企業であっても、産休を求められた場合は、本人を就業させてはならないと労働基準法で定められています。

「産休の制度がないから」は拒否する理由にはなりませんので、注意が必要です。

育休には取得条件があります

出産する本人であれば誰でも取得可能な産休と違い、育休にはいくつかの条件があり、条件を満たしている場合のみ取得可能です。

その条件とは以下の通りです。

  • 有期雇用労働者の場合、子が1歳6か月に達する日までに、契約が満了することが明らかでないこと
  • 労使協定の締結により、取得対象外となっていないこと
  • 次の対象者は労使協定の締結により、除外することが可能とされる。→引き続き雇用された期間が1年未満の労働者(無期雇用・有期雇用)
  • 日々雇い入れられる者でないこと(日々雇い入れられる者の場合、育休対象者からは除外)

上記の条件を満たしている場合、会社は育休希望者の申し出を拒むことはできないと育児・介護休業法によって定められています。

従業員から育休の申請があった場合には、取得条件を満たしているか必ず確認しましょう。


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男性も育休を取得可能な時代です

産休の取得対象者は、出産する女性本人とされていますので、男性は産休を取得することはできません。

しかし育休の取得対象者は、“原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者”と定められているため、男性も取得することが可能です。

そのため、男性従業員から育休の申請があった場合でも、法律に定められている通り、申請を拒否することはできません。

また政府は、2025年に男性の育児休業取得率30%を達成することを目標としています。

この目標を達成するために、2021年6月に改正育児・介護休業法が成立し、2022年4月から順次施行されています。

男性の育休取得が、当たり前となる時代へと変化しています。

産休・育休制度がない会社

産休や育休は取得の前例がないし、そもそも就業規則に記載がない…なんていうことはありませんか?

産休や育児休業は労働基準法上の「休暇」に当たり、就業規則に必ず記載しなければならない事項とされています。

もし未だに就業規則等において定めがない場合は、迅速に対応しましょう。

なお、就業規則に記載がない場合でも、休業の取得条件を満たしている従業員から申し出があった場合、会社は休業を認めなければなりません。

また、“育休中・復職後の賃金の取扱い”“時短勤務等における始業及び終業の時刻”等についてもあらかじめ記載しておくことで、トラブルを事前に防止し、リスクを回避することが可能となります。

そのためにも、最新の法改正に対応した就業規則の整備は必要不可欠なのです。

不利益な取扱いはNG!


休業の取得条件を満たしている従業員からの育休申請を、会社が正当な理由もなく拒否するのは違法となります。

また、妊娠や出産、育休取得を理由に、解雇や降格、給与の減給等の不利益な取扱いを行うことも違法となります。

これは、男女雇用機会均等法第9条や育児・介護休業法第10条によって定められています。

“不利益な取扱い”の例は以下の通りです。

  •  解雇 / 有期雇用者の契約更新の拒否
  •  降格(正社員→パート等)
  •  給与の減給
  •  不利益な人事評価
  •  不利益な配置変更
  •  自宅待機を命ずる 他

 以上は、あくまでも不利益な取扱いの一例のため、ここに掲げていない行為についても不利益な取扱いに該当するケースもあり得ます。

無意識のうちに不利益な取扱いを行っていないか今一度確認し、社内にも周知しましょう。

ハラスメント行為も禁止です

男女雇用機会均等法第 11 条及び育児・介護休業法第 25 条では、“職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント”について、事業主に防止措置を講じることを義務付けています。

“職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント”とは、具体的にどのようなものでしょう。

それは、「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産・育休等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育休等を申出・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されることです。

よく耳にする言葉でいえば、「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)」や「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)」です。

無意識に、または何気ない一言もハラスメントに該当するケースもありますので、ハラスメントにあたる例を確認し、言動には注意しましょう。

ハラスメントの例

  • 「妊婦はいつ休むかわからないから仕事は任せられない」と繰り返し又は継続的に言い、仕事をさせない状況
  • 「自分だけ短時間勤務をしているなんて周りを考えていない。迷惑だ。」等と言う
  • 「男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない」等と言う
  • 「妊娠おめでとう。退職日はいつ?」等と言う

もし不利益な取扱いやハラスメントを行ってしまった場合は、法的手段が解決方法となる場合もあり、会社としても個人としても社会的信用を失いかねません。

会社は、不利益な取扱い・ハラスメントの防止措置を講じることはもちろん、起こってしまった場合の代償の大きさを従業員にも理解してもらうことが大切です。

拒否した場合の罰則について

従業員からの育休の申請を拒否した場合に適用される法令は、「育児・介護休業法」であり、それ自体には罰則規定はありません。

しかし、申請の拒否は違法のため、各都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が調査に入り、厳しい行政指導が行われることとなります。


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まとめ

 今回、産休・育休は、法律に基づいて労働者が申請・請求できる権利であることがわかりました。

そして会社は、拒否することは違法にあたり休業を認めなければならないこともわかりました。

 人手不足や繁忙期など会社には会社ごとに事情はあります。しかし、妊娠や出産をコントロールすることはできません。

従業員からの突然の報告にも慌てることの無いように、産休・育休についての社内理解を深め、就業規則を整備する等の準備を徹底しましょう。

育休に関するご質問や、就業規則の整備について不安があるという事業者様は、ぜひSATO社会保険労務士法人に気軽にご相談ください。

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