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従業員が入社した時の社会保険・労働保険の加入手続きと流れを解説

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目次

新しく従業員が入社した場合、会社は原則として、社会保険や労働保険の加入手続きをしなければなりません。

手続きが遅れると、保険料が正しく徴収されなかったり、健康保険証が発行されない等、会社や従業員のトラブルにつながる可能性があります。

そのため担当者は、社会保険や労働保険の加入手続きについて、流れをしっかりと把握し、スムーズに対応ができるよう準備しておきましょう。

そこで今回は、従業員入社時の社会保険・労働保険の加入手続きとその流れについて解説をします。

社会保険・労働保険手続きに必要な情報を取得する


社会保険や労働保険の手続きを行う際は、まず、従業員の情報を取得することからスタートします。

あらかじめ必要な情報をきちんと収集しておくことは、その後の加入手続きを効率よく進めるうえで、非常に重要です。

情報の取得に漏れがないよう、事前にチェックリスト等を作成し、準備をしておきましょう。

また、取得した情報は、従業員の個人情報にあたるため、厳重に管理をしましょう

特にマイナンバーは、行政サービスと紐づいているため、漏洩するとそこから様々な個人情報が流出してしまいます。

マイナンバーの取扱いについては、他の情報と区別するだけでなく、社内で管理体制を整備するなど、慎重な対応が求められます。

従業員が社会保険・労働保険の加入要件を満たすかチェック

入社する従業員の全員が、社会保険や労働保険に加入するわけではありません。

そのため会社の担当者としては、まず、入社する従業員が社会保険や労働保険の加入要件を満たしているのかどうか、チェックすることが必要です。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件

社会保険の主な加入要件は、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であることです。

所定労働時間、及び所定労働日数とは、雇用契約書や就業規則で会社が定めた労働時間や労働日数のことをいいます。

そのため、たまたま残業が多く発生した影響で所定労働時間や所定労働日数が4分の3以上になったとしても、上記の基準は満たしません。

ただ、所定労働時間と所定労働日数が4分の3未満であったとしても、次の5つすべての要件を満たす場合には、社会保険の加入要件を満たします。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 雇用期間が2か月以上見込まれること
  3. 1ヵ月の賃金が88,000円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 特定適用事業所であること    

2の「雇用期間が2か月以上見込まれること」とは、雇用契約書等に契約更新の旨が明示されている場合や、その事業所で過去に更新によって2ヵ月を超えた雇用された人がいることなどをいいます。

5の「特定適用事業所であること」とは、ざっくりいうと厚生年金の被保険者が101人以上の事業所のことをいいます。

また、厚生年金保険は70歳未満、健康保険は75歳未満であることも、加入要件となります。

2024年10月に社会保険の適用拡大

2020年5月に年金制度改正法が成立し、社会保険の適用範囲が2022年と2024年に段階的に拡大されることになりました。

現在、特定適用事業所は、厚生年金被保険者が101人以上の事業所のことを指しますが、2024年10月からは被保険者数が51人以上となります。

その結果、これまで社会保険未加入だったパート・アルバイト従業員の多くが、社会保険の加入対象に含まれることになります。

パート・アルバイト従業員が多く在籍している会社では、早めの対応・準備が必要になります。

労働保険(雇用保険、労災保険)の加入要件

労災保険については、原則として、事業所で働くすべての労働者が加入要件をみたします。

雇用保険については、次の3つの要件をいずれも満たす場合、加入が必要です。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
  3. 学生でないこと

2の「31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者」には、雇用契約書等に記載されている雇用期間が31日以上の場合のほか、契約期間が31日未満であっても契約書に更新規定がある場合や、更新の実績がある場合なども含まれます。

社会保険と労働保険の加入手続き

従業員が社会保険や労働保険に加入することを、資格取得といいます。

従業員が社会保険と労働保険の加入要件を満たす場合、会社は資格取得の手続きをしなければなりません。

それぞれの資格取得手続きについて解説をします。

入社時の社会保険(健康保険、厚生年金保険)の加入手続き

従業員の入社時に、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の加入手続きをするには、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」という書類が必要です。

この書類は、年金機構のホームページからダウンロードすることもできますし、最寄りの年金事務所でもらうことも可能です。

この書類に必要事項を記載し、管轄の年金事務所または健康保険組合に提出します。

提出期限は入社日から5日以内です。

多少遅れても受け付けてくれますが、健康保険被保険者証の発行が遅れるなど、トラブルにつながる可能性があるので、できるだけ早めに提出するようにしましょう。

添付書類は原則として必要ありません。

ただし、60歳以上の従業員が、退職後1日も空けずに定年再雇用される場合は、退職日を証明するための書類(就業規則や雇用契約書など)が必要になります。

入社時の労働保険(雇用保険、労災保険)の加入手続き

労災保険については、労働者であればアルバイト・パートなど名称を問わず、原則として全員が自動的に加入となるため、個別の手続きは必要ありません。

雇用保険の加入手続きは、「雇用保険被保険者資格取得届」を作成し、管轄のハローワークに提出をします。

提出期限は、労働者を雇用した翌月の10日までです。

社会保険とは期限が異なるので注意しましょう。

「雇用保険被保険者資格取得届」には、マイナンバーの記載が必要ですが、もし従業員からマイナンバーの提供を拒否された場合には、備考欄に「拒否されたため記載なし」など理由を明確に記載して届出を行います。

雇用保険の資格取得届をすると、ハローワークから資格取得等確認通知書が交付されます。

この通知書は、会社で大事に保管するとともに、右側は「雇用保険被保険者証」になっているので、従業員に渡しましょう。

外国人労働者の場合は氏名に注意しましょう

雇用保険資格取得届の氏名欄は、カタカナで最大20文字までとなっています。

そのため、外国人労働者の場合は、「雇用保険被保険者証」にすべての名前を表記させることができない可能性があります。

また、国によっては、氏と名の区別が明確でないケースもあります。

そのまま届出をして、発行された雇用保険被保険者証の名前が違うと、トラブルにつながりかねません。

外国人労働者の資格取得届を行う際は、名前をどのように表記させたいのか、通称や略称を使うか、事前に確認しておくとよいでしょう。


社会保険の手続き代行を社労士に委託する場合のメリット|SATO社会保険労務士法人

はじめて社労士に手続き代行を委託する場合、具体的にどんなメリットがあるのかわからないという方も多いと思います。 そこで今回は、社労士への委託を検討している事業者様向けに、社会保険の手続き代行を委託するメリットや注意点について詳しく解説をしたいと思います。

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従業員が古い健康保険証で病院で受診してしまった場合


協会けんぽの場合、健康保険証は手続きから1週間程度で発行されます。

ですが、4月など入退社が多い時期は、1か月程度かかるケースもあります。

その間に、従業員が古い健康保険証を使って病院で受診した場合はどうなるのでしょうか。

まず、新しく発行される健康保険証と、従業員が使用した古い健康保険証とが、いずれも協会けんぽが発行する者である場合は、協会けんぽ内で処理をしてくれるため、原則として手続きは不要です。

それ以外の場合ですと、すでに病院窓口で負担した3割に加え、残りの7割も従業員がいったん負担し、あとから領収書などを提出して、7割分を返還してもらうことになります。

健康保険証が発行されるまでの間に、従業員が病院に通いたいという場合は、健康保険証の変わりに使用できる「健康保険被保険者資格証明書」を発行しましょう。

健康保険被保険者証の氏名欄は常用漢字へ置き換えられる

氏名に常用漢字以外の文字が含まれる方の場合、健康保険被保険者証の氏名欄は、常用漢字に置き換えられる可能性があります。

以前は、常用漢字以外の氏名で届出が行われると、健康保険組合等が個別に文字を作成し、健康保険被保険者証を発行するケースがありました。

しかし、申請書類等の電子化にともない、常用漢字以外の対応が難しくなっています。

弊社が確認したところによりますと、協会けんぽの場合は、既に登録されている文字については使用できますが、それ以外の場合はカタカナ表記になる可能性があるとのことです。

場合によっては、従業員から名前の記載にミスがあると相談を受けるかもしれませんので、事前に説明しておくとよいでしょう。

まとめ

入社時の社会保険・労働保険の手続きの流れは、主に次の通りです。

  1. 従業員の必要な情報を取得する
  2. 入社する従業員が加入要件を満たすかどうか確認する
  3. 定められた期限内に手続きをする

特に、健康保険については手続きが遅れると、健康保険証が交付されないなどのトラブルにつながる可能性があります。

担当者は、手続きの流れを把握し、スムーズに手続きをすすめていきましょう。

社会保険・労働保険の手続きに関して、ご質問やご相談がありましたら、是非SATO社会保険労務士法人までお問合せ下さい。

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