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従業員のダブルワーク、会社は労働時間をどう管理すればいい?

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新型コロナや働き方改革の影響を受けて、ダブルワークを希望する方が増えています。

皆さんの会社でも、ダブルワークをしたいという従業員の方がいるのではないでしょうか。

ただ、従業員がダブルワークをする場合、会社は従業員の労働時間をしっかりと管理しないと、労働基準法違反になってしまう可能性があるので注意が必要です。

そこで今回は、ダブルワークをしている従業員の労働時間をどのように管理・計算すればよいかについて解説したいと思います。

ダブルワーク時の労働時間は通算されます


従業員がダブルワークをする場合、その従業員の勤務先となるすべての会社は、それぞれの事業場の労働時間を通算して管理する必要があります。

労基法では、過重労働から労働者を保護するため、労働時間の上限を単月100時間未満、複数月平均80時間以内と定めています。

この上限は、各勤務先の労働時間を通算(合算)して、超えるかどうかが判断されるため、従業員がダブルワークをする際は、各会社が労働時間全体を把握・管理する必要があるのです。

ただ、自社と関係のない別会社で、労働者が何時間働いているか把握するのは容易ではありません。

そこで、会社はどのように労働時間を管理するべきか、ダブルワーク開始前とダブルワーク開始後に分けて解説をします。

ダブルワーク開始前の労働時間の管理方法

従業員がダブルワークを開始する前に、従業員から、ダブルワーク先の所定労働時間を申告してもらいます。

そして、自社の所定労働時間とダブルワーク先の所定労働時間とを通算し、法定労働時間を超えないかどうか判断します。

所定労働時間とは、雇用契約等で定めた労働時間をいい、法定労働時間とは労働基準法によって定められた上限(1日8時間・1週40時間)のことをいいます。

通算の結果、法定労働時間を超える場合は、後から労働契約を締結した勤務先で超過する部分が時間外労働となります。

例えば、自社(A社)の1日の所定労働時間が6時間、ダブルワーク先(B社)の所定労働時間が4時間であった場合、B社で勤務した2時間の部分が時間外労働となります。

この場合、B社では36協定を締結している必要があるほか、2時間分について割増賃金を支払わなければなりません。

ダブルワーク開始後の労働時間の管理方法

ダブルワークの開始後については、自社の所定外労働時間と、ダブルワーク先の所定外労働時間を通算して、法定外労働時間の有無をチェックします。

通算する順番としては、実際に働く順番に通算をします。

従業員がA社で勤務したあと、B社でダブルワークをする場合には、A社→B社の順に所定外労働時間を通算します。

ダブルワーク開始前のように、労働契約を締結した順番ではないので注意しましょう。

通算の結果、法定外労働時間が発生した事業場では、36協定の締結や割増賃金の支払いが必要となります。

もし、従業員のダブルワークについて、ご質問やご相談がある場合は、SATO社会保険労務士法人にお問合せください。

経験豊富な専門の社労士が、お客様の質問に対して、丁寧・わかりやすく解説をさせて頂きます

管理モデルで時間管理を効率化

これまで説明したとおり、従業員がダブルワークをするとき、勤務先となるそれぞれの会社は、その従業員の労働時間全体をしっかりと把握・管理しなければなりません。

ただ、自社ではない別の会社の労働時間を把握するのは容易ではありません。

そこで、厚生労働省では「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で、「管理モデル」による労働時間管理を紹介しています。

この管理モデルとは、労使双方の手続き負担を軽減しつつ、労基法違反にならないよう労働時間管理が行える方法のことをいいます。

管理モデルの導入方法

一般的に管理モデルは次の流れで導入をします。

まず、本業となる勤務先(A社)では、従業員がダブルワークをする前に、ダブルワーク先(B社)の労働時間、およびA社とB社を通算した労働時間について、労基法の枠内で上限を設定します。

例えば、A社の法定外労働時間が月60時間の場合、B社の所定労働時間および所定外労働時間の上限を単月で40時間未満、複数月の平均を20時間以内に設定をします。

そして、ダブルワークを申し出た従業員にこの上限を伝えるとともに、従業員を通じて、B社にもこの内容を伝えます。

そして、A社は自社の法定外労働時間について、B社は所定労働時間および所定外労働時間について、割増賃金を支払います。

こうすることで、別の会社で労働者が何時間働いたかを、度々確認することなく、労働時間管理が行えるようになるのです。

従業員のダブルワークは禁止できない?


これまで、従業員がダブルワークをする際の、労働時間の管理方法について解説をしてきました。

管理モデルによって、労働時間管理の効率化を図ることができますが、それでも自社のみで就労するときと比べると、会社に対する手続き的な負担は大きくなります。

そこで、「そもそも従業員のダブルワークを禁止してしまえばいいのでは?」と考える会社の担当者の方もいるかもしれません。

しかし、会社が労働者のダブルワークを一切禁止することは、原則としてできません。

なぜなら、勤務外の時間をどのように使うかは、基本的に労働者の自由だからです。

ただ、次のような例外的な事由がある場合には、労働者のダブルワークを禁止・制限することが可能になります。

  • 労務提供上の支障がある場合
  • 業務上の秘密が漏洩する場合
  • 競業により自社の利益が害される場合
  • 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

こうした理由がある場合でも、労働者のダブルワークを禁止・制限する場合は、あらかじめ就業規則などで労働者に明示しておくことがトラブルを避けることにつながるため、おすすめです。

従業員の労務管理については社労士を利用すると便利

従業員のダブルワーク時の労働時間管理など、労務管理を適切に行うのは簡単なことではありません。

しかし、労務管理を間違えると、従業員とのトラブルにつながったり、知らない間に法令違反になってしまうリスクがあります。

もし、自社の労務管理について、不安やお悩みのある方は、社労士に相談をすると便利です。

社労士とは、人事・労務管理の専門家のことをいい、相談をすれば、適切なアドバイスや手続きの代行をしてくれます。

また、労務管理を社労士に外注することで、社内のリソースを確保することにもつながります。

気になる方は、社労士への相談をおすすめします。


社労士(社会保険労務士)に相談できることをわかりやすく解説|SATO社会保険労務士法人

経営者や人事・労務の担当者であれば、社労士という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。 ただ、中には「そもそも社労士に何が依頼できるのかわからない」という方も多いかと思います。 そこで今回は、社労士に相談できる業務内容や、必要になる費用、相談するタイミングについて、わかりやすく解説をしたいと思います。

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まとめ

従業員がダブルワークをする場合、それぞれの勤務先では、労働者の労働時間全体を把握・管理する必要があります。

労働基準法で定められた労働時間の上限規制は、労働時間を通算して判断されるためです。

適切に管理ができていないと、労働基準法違反として処罰される可能性があるので注意しましょう。

労働時間の効率化を図る方法として、厚生労働省が提示する「管理モデル」があります。

ダブルワークを希望する従業員が多い会社では、労働時間の管理方法について、管理モデルを参考にしてみてはいかがでしょうか。

従業員のダブルワークやその管理について、不明点やご質問のある方は、SATO社会保険労務士法人にご相談ください。

経験豊富な専門のスタッフが対応させて頂きます。

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