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60歳で定年退職する従業員の社会保険と雇用保険の手続き

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目次

従業員が60歳で定年退職をする際、会社としては、社会保険や雇用保険の資格喪失手続きが必要です。

また、退職後も失業給付の受給手続きや、年金の繰り上げなど、社会保険や雇用保険に関するさまざまな手続きが発生します。

退職後の手続きについては、基本的に退職者本人が行いますが、会社側も退職者が困らないように、あらかじめ説明してあげる方がよいでしょう。

そこで今回は、従業員が60歳で定年退職する際の、社会保険・雇用保険の手続きについて解説をします。

社会保険や雇用保険について、「もう少し詳しく聞いてみたい」「社労士に直接相談したい」という方は、ぜひSATO社会保険労務士法人にご相談ください。

定年退職時の社会保険(厚生年金・健康保険)の手続き

従業員が定年退職する場合、会社はその従業員について、社会保険(厚生年金・健康保険)の資格喪失手続きをしなければなりません。

この場合、事業者側で「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を作成し、管轄の年金事務所または健康保険組合に、退職日の翌日から5日以内に提出をします。

このとき、定年退職者から健康保険被保険者証を回収し、資格喪失届に添付して提出をします。

定年退職者に扶養家族がいる場合には、被扶養者の健康保険被保険者証も忘れずに回収して添付しましょう。

もし、定年退職者と連絡がとれず回収ができない場合には、「健康保険被保険者証回収不能届」を作成して代わりに提出する必要があります。

老齢年金の繰り上げ支給

老齢年金の支給開始時期は原則として65歳からなので、60歳で定年退職をした場合、年金支給まで5年の期間があります。

そのため、中にはもっと早く年金を受け取りたいという方もいると思います。

そういう方は、手続きをすれば、老齢年金の受給開始を1ヵ月単位で繰り上げ請求することも可能です。

しかしその場合、受け取ることのできる年金額が減少してしまう、障害年金や遺族年金が受給できなくなる、国民年金の任意加入ができなくなるなどのデメリットがあります。

そのため、繰り上げ支給を希望する労働者がいる場合には、会社はこれらのデメリットをきちんと説明しておくようにしましょう。

老齢年金の加入期間が足りない場合

老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)は、原則として、保険料の納付済期間等が10年以上ある場合に、65歳から受け取ることができます。

そのため、厚生年金保険と国民年金の加入期間が10年に満たない場合は、65歳になっても老齢年金を受け取ることができない可能性があります。

また、保険料の納付済期間が40年に満たない場合は、老齢基礎年金を満額受給することはできません。

この場合、一定の条件を充たせば、60歳以降も国民年金に任意加入することができます。

国民年金に任意加入できるのは、次の5つの条件をすべて満たした方です。

  • 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満であること
  • 老齢基礎年金の繰上げ支給を受けていないこと
  • 20歳以上60歳未満までの保険料の納付月数が480月(40年)未満であること
  • 厚生年金保険、共済組合等に加入していないこと
  • 日本国籍を有しない方で、在留資格が「特定活動」ではないこと

もし、希望する退職者がいる場合は、説明してあげましょう。

定年退職後の健康保険の手続き


定年退職者は、健康保険について主に次の3つの選択をすることができます。

  1. 家族の扶養に入る
  2. 国民健康保険に加入する
  3. 退職した後も勤務していた会社の健康保険に加入し続ける(任意継続)

家族の扶養に入る場合は、扶養に入ってから5日以内に、扶養者が務めている会社で手続きを行います。

国民健康保険に加入する場合は、退職日の翌日から14日以内に、従業員が住んでいる地域を管轄する市区町村役場で手続きします。

任意継続をする場合は、退職日の翌日から20日以内に、会社が加入していた協会けんぽ、又は健康保険組合で手続きをします。

これらの手続きはいずれも、従業員本人が行うものですが、手続きについて質問や相談をされるかもしれないので、担当者は念のため頭に入れておきましょう。

特に、任意継続については、在職時の保険料が労使折半であったのに対し、任意継続後は全額従業員の負担となる点に注意が必要です。

定年退職後の雇用保険の手続き

従業員が定年退職した場合、会社は「雇用保険被保険者資格喪失届」を作成し、管轄のハローワークに提出をします。

提出期限は、定年退職日の翌日から10日以内です。

このとき、「雇用保険被保険者離職証明書(離職票)」の発行手続きも忘れずに行いましょう。

基本的に、離職票の発行手続きは、退職者が希望する場合だけ行えばよいのですが、退職者が59歳以上の場合は、本人の希望の有無にかかわらず、必ず手続きをしなければなりません。

離職票の発行手続きが遅れると、退職者の失業給付の遅れ等につながる可能性があるので、迅速に対応する必要があります。

失業給付の受給期間延長が可能

定年退職者が雇用保険の失業給付を申請する場合、定年退職者には給付制限がないので、7日間の待期期間後すぐに受給することができます。

会社は、定年退職後すぐに資格喪失手続きと離職票の発行手続きを行うようにしましょう。

また、すぐに再就職する予定のない定年退職者については、失業給付の受給期間延長の手続きをしておくと、再就職先を探し始めたタイミングで失業給付を受給することができます。

受給期間の延長は最長で1年であること、受給期間延長の期限は定年退職の翌日から2か月以内であることに注意が必要です。

定年再雇用をする場合の社会保険の手続き


定年再雇用とは、定年退職者に継続勤務の意思がある場合、退職後に新たに雇用契約を締結する制度のことをいいます。

現在、企業に対しては、法律により高齢者雇用確保措置が義務付けられており、次の3つの措置のいずれかを実施しなければなりません。

  1. 定年制の廃止
  2. 定年引上げ
  3. 継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制制度等)の導入

定年再雇用制度は、高齢者雇用確保措置の中の3,継続雇用制度(再雇用制度)です。

厚生労働省の2021年の発表によると、中小企業の約75%が定年再雇用制度を導入しており、もっとも一般的な高齢者雇用確保措置といえます。

定年再雇用と同日得喪手続き

定年退職後1日も間をおかずに、すぐに同じ会社で再雇用される場合、社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失手続きは必要ありません。

ただし、定年再雇用後は、勤務条件の変更や勤務時間の短縮等により、賃金が減額するのが一般的です。

それにもかかわらず、退職前の給料を基に社会保険料を算出すると、従業員の手取り額が大幅に減額してしまいます。

そこで、管轄の年金事務所に被保険者資格喪失届と被保険者資格取得届を同時に提出することで、定年再雇用された月から、再雇用後の給与に応じた額に標準報酬月額を変更することができます。

これを、同日得喪手続きといいます。

同日得喪をすることで、定年退職者は、減額された給与に見合った社会保険料の負担で済むというメリットがあります。

しかし一方で、年金受給額の減額などのデメリットもあるので、同日得喪をする際は、必ず従業員に制度の説明をするようにしましょう。

定年再雇用と雇用保険の手続き

定年再雇用後も、労働条件が変わらないのであれば、雇用保険はそのまま継続となるので手続きは不要です。

しかし、定年再雇用後、労働条件が変わり、雇用保険の加入要件を充たさなくなった場合は、雇用保険被保険者資格喪失の手続きが必要です。

雇用保険の基本的な加入要件は次の3つです。

  • 勤務開始時から31日以上働く見込みがあること
  • 1週間あたり20時間以上働いていること
  • 学生ではないこと

定年再雇用により労働条件が変わる場合は、それぞれの要件を満たしているかどうか、担当者は注意するようにしましょう。


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まとめ

従業員が定年退職する場合、会社は社会保険や雇用保険について資格喪失などの手続きをしなければなりません。

また、退職後すぐに再雇用する定年再雇用という制度もあります。

このときは、社会保険について同日得喪という特別な手続きをすることで、労使双方の社会保険料の負担を軽減することができます。

会社の経営者や担当者は、それぞれの手続きの内容をしっかり把握しておくようにしましょう。

もし、従業員の定年退職について、「手続きがわからない」「手続きの方法について相談したい」「手続きの代行を依頼したい」などのご希望がございましたら、ぜひSATO社会保険労務士法人までご相談ください。

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