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パートでも週20時間以上働いたら社会保険加入条件を満たす?

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現在、パートやアルバイトなどの短時間労働者を対象に、社会保険の適用範囲が段階的に拡大しています。

そんな中、ネット等では「パートでも週20時間以上働いたら社会保険の加入条件を満たす」という、情報を目にすることがあります。

しかし、これは正確な情報ではありません。

正確には、「週に20時間以上働くこと」に加え、いくつかの条件を満たした場合に、社会保険の加入条件を満たすのです。

そこで今回は、会社の人事や労務担当者に向けて、「所定労働時間が週20時間以上であること」の意味や、パート従業員の社会保険の加入条件等について詳しく解説をしたいと思います。

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パートの社会保険の加入条件は「4分の3」が基準


そもそも、パートやアルバイト等の通常の労働者より、労働時間が短い労働者については、「4分の3」が、社会保険加入条件の基準となります。

つまり、週の所定労働時間と月の所定労働日数が、その事業所の通常の労働者(社員)と比べて、4分の3以上である場合には、社会保険の加入条件を満たすのです。

例えば、正社員の1週間の所定労働時間が40時間、かつ、1ヵ月の所定労働日数が20日の会社であれば、1週間の所定労働時間が30時間以上、かつ、1ヵ月の所定労働日数が15日以上の従業員は、社会保険の加入条件を満たします。

ここでいう所定労働時間とは、雇用契約書や就業規則などに記載されている労働時間のことをいい、実際の労働時間ではありません。

そのため、たまたま繁忙期に、1週間に30時間以上働いたとしても、雇用契約書に記載された労働時間が30時間未満である場合には、社会保険の加入条件を満たさないこととなります。

4分の3基準を満たさない場合の社会保険加入条件

週の所定労働時間と月の所定労働日数が通常の労働者と比べて4分の3未満の従業員は、原則として社会保険の加入条件を満たしません。

しかし、次の5つの要件を全て満たした場合には、例外的に社会保険の被保険者となります。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 2ヵ月を超えて継続雇用される見込みがあること
  3. 月額賃金が88,000円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 特定適用事業所で働いていること

特定適用事象所とは、被保険者101人以上の事業所をいいますが、2024年10月以降は51人以上に引き下げられる予定です。

上記5つの条件の中で、特に話題になるのが1の「1週間の所定労働時間が20時間以上であること」です。

なぜなら、会社と労働者が合意をすれば、他の条件に比べて簡単に変更することができるため、社会保険に加入したくないというパート・アルバイト従業員の労働時間を見直すケースが増えているためです。

そこで以下では、この条件について詳しく解説をします。

「1週間の所定労働時間が20時間以上である」とは?

ただ、従業員の所定労働時間は会社ごとにさまざまです。

週の所定労働時間が変動する場合や、所定労働時間が1か月単位で定められているような場合はどうすればよいのでしょうか。

所定労働時間とは?

所定労働時間とは、雇用契約書や就業規則などに明示された労働時間のことをいい、実際に労働者が勤務した実労働時間とは異なります。

そのため、繁忙期に20時間以上働いたとしても、雇用契約書に記載された労働時間が1週間20時間未満である場合は、原則としてこの条件を満たさないことになります。

ただ、1週間の所定労働時間が20時間未満であったとしても、実際の労働時間が2ヵ月連続で20時間以上で、かつ、その状況が今後も見込まれる場合には、3か月目の初日から条件を満たしたことになります。

週の所定労働時間が変動する場合

4週6休制度など、1週間の所定労働時間が一定の周期で変動するケースの場合は、その一定の周期における1週間の所定労働時間を平均して判断をします。

例えば、1日の所定労働時間が3時間で、1週目が週休1日、2週目が週休2日の4週6休制度の場合、((3×6)+(3×5))÷2で、週の所定労働時間は16.5時間となり、条件をみたさないことになります。

所定労働時間が1ヵ月単位の場合

所定労働時間が1か月単位で定められている場合は、1か月の所定労働時間を12分の52で除して計算をします。

1年間を52週間と考えたうえで、1週間の所定労働時間を算出するのです。

例えば、1ヵ月の所定労働時間が104時間だった場合、104÷52/12=24となり、週の所定労働時間が20時間以上となるため、条件を満たします。

なお、あまりないケースですが、所定労働時間が1年単位で定められている場合は、52で除して週の所定労働時間を算出します。

その他の社会保険加入条件


ここまで、短時間労働者の社会保険加入条件「1週間の所定労働時間が20時間以上あること」について、詳しく解説をしました。

ただ、パートなどの短時間労働者が社会保険の被保険者になるには、他にも下記4つの条件を満たす必要があります。

  • 2ヵ月を超えて継続雇用される見込みがあること
  • 月額賃金が88,000円以上であること
  • 学生でないこと
  • 特定適用事業所で働いていること

それぞれの条件を解説していきます。

2ヵ月を超えて継続雇用される見込みがあること

典型的には、雇用期間の定めがない場合や、雇用期間が3ヵ月以上ある場合のことを指しますが、その他にも次のようなケースを含みます。

  • 雇用期間は2ヵ月以内であっても、就業規則や雇用契約書によって、更新される旨または更新されることがある旨が明示されているケース
  • 雇用期間が2ヵ月以内であっても、同じ事業所で働く同様の労働者が、更新等により2ヵ月を超えて雇用されているケース

ただし、2ヵ月を超えて雇用しないことについて、労使双方が合意をしている場合には、継続雇用される見込みがないものとして扱われます。

月額賃金が88,000円以上であること

月額賃金には、基本給だけでなく諸手当も含まれます。

ただし、賞与など1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金や、時間外・休日・深夜労働に対して支払われる割増賃金などは含まれません。

また、日給や時間給で賃金が定められている場合には、同じ事業所で同様の業務をしている従業員の直近1カ月間の報酬額を平均して88,000円以上かどうかを判断します。

学生でないこと

ここでいう学生とは、高等学校の生徒や、大学・短期大学の学生等のことをいいます。

休学中や、定時制・通信制に通う学生はここには含まれません。

また、卒業後も引き続きその事業所で勤務することが決まっている方も、ここでいう学生には含まれません。

特定適用事業所で働いていること

特定適用事業所とは、社会保険(厚生年金保険)の被保険者数が常時101人以上の事業所のことをいいます。

法人の場合は、同一の法人番号の事業所に使用されている被保険者数を合算して、常時101人以上かどうかを判断します。

例えば、ある法人の本社が東京、支社が大阪、工場が北海道にある場合、3か所で使用されている被保険者数を合算した数が、常時101人以上であれば特定適用事業所に該当します。

現在、社会保険の適用範囲は段階的に拡大されており、2024年10月からは、被保険者数が51人以上に引き下げられます。


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まとめ

パート従業員の場合、週の所定労働時間と月の所定労働日数が正社員の4分の3以上場合、社会保険の被保険者になります。

4分の3未満の場合でも、一定の要件を満たす場合には、例外的に社会保険の加入条件を満たします。

その要件の1つが「週の所定労働時間が20時間以上であること」です。

社会保険の適用拡大にともなって、パート従業員が社会保険の加入を希望しない場合等に、労働時間の調整をするケースが増えています。

会社としては、社会保険に加入することのメリットなどもしっかりと説明したうえで、労働時間を見直すようにしましょう。

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