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【2023年4月】労働安全衛生規則改正、請負人等の保護措置が義務化

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目次

2023年4月1日から、危険有害な作業を行う事業者は、請負人や同じ場所で従事する労働者以外の人に対しても、保護措置を講じることが義務付けられます。

危険有害な作業とは、「労働安全衛生規則」や「有機溶剤中毒予防規則」、「石綿障害予防規則」など、健康障害防止の観点から、保護措置を講じることが事業者に義務付けられている作業のことをいいます。

今回は、改正によって必要となる保護措置について、その内容や対象について、解説をしたいと思います。

請負人等に対する保護措置の義務化


危険有害な作業を行う作業場においては、直接従事する労働者だけでなく、請負人に対しても健康障害が生じるおそれがあります。

そのため事業者は、危険有害な作業の一部を請負人等に対して請け負わせる場合は、次の通り労働者と同等の保護措置を図ることが必要となります。

設備使用等の配慮義務

作業環境の改善や、ばく露防止のための措置については、事業者は請負人等に対しても、労働者と同水準の保護が図られるよう配慮しなければなりません。

例えば次のような配慮を行うことが必要です。

  • 請負人の作業時に局所排気装置や換気設備を稼働させる
  • 洗浄設備や保管設備を使用させる

事業者が自ら設備を稼働させるだけでなく、請負人自身がこれらの設備を稼働させることができるよう、設備の使用を許可し、又は、場所を提供することも「配慮」に含まれます。

配慮義務は、ただ配慮をすればよいというものではなく、事業者と雇用契約を締結している労働者と同等の保護が図られるよう便宜を図られなければ、配慮義務を果たしたとはいえません。

作業方法の周知義務

特定の作業方法を行うことが義務付けられている作業については、事業者は請負人等に対しても、その作業方法を周知する義務を負います。

請負人は労働者と異なり、事業者との間に直接の雇用関係がなく、指揮命令関係がありません。

そのため事業者は、作業方法等について、請負人に指揮命令をすることができないため、周知をすることが義務とされています。

保護具に関する周知義務

作業場全体に危険が及ぶ場合など、労働者に保護具を使用させることが義務付けられている作業については、事業者は請負人に対して、保護具の使用が必要である旨を周知することが義務付けられます。

周知が必要とされている理由については、上記、作業方法の周知義務の場合と同じです。

周知の方法

周知の方法については、法令によって定められており、具体的には次のいずれかによることが必要です。

  • 常時作業場の見やすい場所に掲示する、又は備え付ける
  • 書面を交付する
  • PC等に記録し、常時労働者が確認できるようにする
  • 口頭による周知

周知するためには、労働者が見ようと思えば見える状態にあることが必要です。

そのため、会社HPなどに掲載した場合でも、パスワードがかかっている場合などは、周知として認められない可能性があるので注意しましょう。

作業のすべてを請け負わせる場合

今回事業者が保護措置の義務を負うのは、あくまで作業の一部を請け負わせる場合です。

すべての作業を請負人に請け負わせる場合、事業者は単なる注文者の立場にあるため、保護措置を設ける義務は負いません。

労働者以外に対する保護措置の義務化

同じ作業場にいる労働者以外の人に対しても、一定の保護措置の実施が義務付けられました。

「同じ作業場にいる労働者以外の人」とは、他者の労働者や、資材搬入業者、警備員などが含まれ、事業者との間の契約関係の有無は問われません。

必要となる保護措置は主に次の3つです。

保護具の使用等の周知

労働者に保護具を使用させる義務がある作業場については、その作業場で従事する労働者以外の人に対しても、保護具を使用する必要がある旨を周知しなければなりません。

周知の方法については、上記、請負人に対する周知と同じです。

立入禁止や喫煙・飲食の禁止、労働者の退避

危険な場所への立入禁止、特定の場所での喫煙や飲食禁止、事故発生時における特定の場所からの退避など、事業者が自らの権限に基づいて講ずるべき安全確保措置については、当該作業場で従事するすべての人が措置の対象となります。

なお、事業者は立入禁止や喫煙・飲食禁止等の措置を行う場合は、見やすい箇所に禁止する旨を表示するなどの方法によって行う必要があります。

化学物質の有害性等の掲示

化学物質の有害性等の掲示義務がある作業場においては、その作業場で何らかの作業に従事するすべての人が見やすい箇所に掲示しなければなりません。

この改正に併せて、石綿則の掲示内容が「石綿の人体に及ぼす作用」から、「石綿により生ずるおそれのある疾病の種類及びその症状」に改正されます。

また、掲示内容に、「保護具を着用しなければならない旨」が追加されます。

請負人等が講ずべき義務


今回の改正で規定されたのは、事業者に対する義務だけではありません。

労働者以外の人も、立入禁止や喫煙・飲食禁止等の措置について、遵守義務を負います。

なぜなら、請負人が安全確保措置を遵守しなければ、健康障害等を防止することができないからです。

ただし、事業者以外の人がこれらの義務に違反した場合でも、罰則等はありません。


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まとめ

2023年4月から、労働安全衛生規則等の改正により、危険有害な作業を行う事業者については、請負人や作業場にいる労働者以外の人に対して、労働者と同等の保護措置を講じることが義務付けられます。

具体的な保護措置の内容は、請負人と作業場で従事する労働者以外の人とで、異なるので注意しましょう。

今回改正の対象となる事業所では、保護措置の内容や請負人等の範囲、具体的な実施スケジュールなど、早めに準備に取り掛かる必要があります。

法改正について、「もう少し詳しく聞いてみたい」「社労士に相談してみたい」という方は、ぜひSATO社会保険労務士法人にご相談ください。


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