企業のリスキリングに助成金が支給されます(人材開発支援助成金)
2022年12月、人材開発支援助成金に新しく「事業展開等リスキリング支援コース」が創設されました。
近年、従業員のリスキリングに力を入れる企業が増える中で、今後活用される助成金の1つとして注目されています。
「リスキリングに興味はあるけど、コスト面でなかなか手が付けられない」という事業者様にとっては、最適な助成金といえます。
そこで今回は、「事業展開等リスキリング支援コース」について、基本的な申請条件や支給額などをわかりやすく解説したいと思います。
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)とは
人材開発支援助成金とは、従業員の職業能力開発等に取り組む企業をサポートするための助成金です。
例えば、企業が従業員に対して、職務に関連した知識や技術を身に着けさせるための職業訓練や人材育成を行った場合に、かかった費用や賃金の一部が支給されます。
人材開発支援助成金には、「特定訓練コース」や「一般訓練コース」など、取組みの内容に応じていくつかのコースが用意されていますが、2022年12月に新しく「事業展開等リスキリング支援コース」が創設されました。
「事業展開等リスキリング支援コース」は、企業が新しい分野へ事業展開するための人材育成や、デジタル化・グリーン化に対応するための人材育成をサポートします。
事業展開等リスキリング支援コースの支給対象
事業展開等リスキリング支援コースの助成金が支給されるのは、次の3つの要件を満たした訓練です。
- 実訓練時間が10時間以上であること
- OFF-JTにより実施される訓練であること
- 「事業展開」に必要となる専門的な知識や技能を習得させるための訓練、または、「デジタル・DX化」や「グリーン・カーボンニュートラル化」を進めるために必要となる専門的な知識や技能を習得させるための訓練であること
「事業展開」とは
ここでいう事業展開とは、新しい商品やサービスを開発したり、製造方法を変更することなどによって、新たな分野への進出や事業・業種を転換すること等をいいます。
ざっくりいうと、企業が事業を拡大・開拓することをいいます。
例えば、次のようなケースが事業展開にあたります。
- 飲食事業者が新メニューを開発して販売する
- 製造事業者が新しい企画の製品を製造・販売する
- 飲食事業者が新しく海外雑貨の販売事業を始める
- 寝具の販売店が新たに洋服店を開業する
- 観光バス事業者が新たに高齢者施設向け送迎サービスを始める
などです。
「デジタルトランスフォーメーション(DX)化」とは
DX化とは、デジタル技術を活用することで、業務効率化や生産性の向上を図ったり、または、新しいビジネスモデルを構築することをいいます。
例えば、次のようなケースのことをいいます。
- 文書の電子化サービスを利用することで社内のペーパーレス化を図る
- 社内のコミュニケーションツールを利用することで、情報共有を効率化する
- 小売業者がキャッシュレスサービスを導入することで手続きを簡略化する
- 物流事業者が専用アプリを導入することで運送状況の見える化をする
- 製造事業者が製造プロセスの分析ツールを導入して効率化を図る
- 介護事業者がリモート支援ツールを導入することで省人化を図る
「グリーン・カーボンニュートラル化」とは
「グリーン・カーボンニュートラル化」とは、省エネや再生可能エネルギーを利用することで、温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにするための取組みをいいます。
具体的には、次のような取り組みのことをいいます。
- 不動産事業者が住宅に太陽光発電システムを搭載するなど物件の環境性能向上させる
- 小売業者が太陽光発電やLED照明を導入することで二酸化炭素の排出を削減
- 建設事業者が建設廃棄物の削減と再生、リサイクルの実施に取り組む
- 農林水産事業者が有機肥料を使用することで地中の根や微生物による二酸化炭素の固定効果を図る
助成率・助成額
人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」の助成率は、中小企業が75%、大企業が60%となっており、いずれも1事業年度の助成限度額は1億円となっています。
また、受講者1人あたりの助成限度額は、中小企業が50万円、大企業が30万円です。
(厚生労働省HPより)
事業展開等リスキリング支援コースの注意点
下記では、人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」の注意点についてまとめます。
訓練開始の1か月前までに訓練計画届出が必要
人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」を活用するためには、訓練開始日の1か月前までに訓練計画届出を、事業所管轄の都道府県労働局にしなければなりません。
届出には、「訓練実施計画届・年間職業能力開発計画」などの必要書類と、雇用契約書などの添付書類が必要になるので注意しましょう。
また、訓練計画を変更する際には、訓練実施計画変更届の提出が必要です。
助成金の支給申請は訓練終了から2か月以内
助成金の支給申請は、訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に行わなければなりません。
申請時には、支給要件確認申立書などの必要書類のほか、訓練中に賃金が支払われていたことを証明するための書類などが添付書類として必要になります。
提出先は、事業所を管轄する都道府県労働局です。
申請後、その内容に虚偽や不備がないか審査が行われたのち、支給・不支給の通知が届きます。
対象とならない訓練
人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」は、事業展開等を行うために必要となる人材の育成を目的とした助成金です。
そのため、次のような訓練について、助成金は支給されません。
- 職務に直接関係がない訓練
- ビジネスマナーなど社会人であれば誰でも共通して必要となる内容の訓練
- 従業員の趣味や教養を身に着けるための訓練
また、訓練に直接必要と認められる経費以外の費用については、助成金の対象にはなりません。
例えば、従業員が外部の訓練に参加するための交通費や宿泊費などです。
事業展開等リスキリング支援コースの申請は社労士に依頼すると便利
「事業展開等リスキリング支援コース」は、中小企業だけでなく大企業も対象になるうえ、助成率も高いので、上手く活用すれば、人材育成に悩んでいる企業にとって強力なサポートになるでしょう。
ただし、助成金の支給を受けるためには、必要書類をミスなく作成したうえで、たくさんの添付書類を集めて提出する必要があります。
通常の業務を続けながら、これらの申請手続きを進めるのは大きな負担になると考えられます。
また、申請手続きでミスをすると、助成金は支給されず、それまでの苦労が無駄になってしまうかもしれません。
効率的に助成金を活用するなら、社労士の利用がおすすめです。
社労士は、人事・労務の専門家なので、助成金の申請を依頼すれば、ミスすることなくスムーズに手続きを代行してくれます。
また、他にも企業にあった助成金や補助金を紹介してくれるので、心強いパートナーになってくれるはずです。
まとめ
2022年12月に新しく創設された、人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」は、事業展開やDX化、グリーン化を進めるうえで必要となる企業の人材育成をサポートするための助成金です。
この助成金は、中小企業だけでなく大企業も対象になっており、助成額も年間1億円と大きいことから、今後、リスキリングに力を入れている企業が積極的に導入していくものと考えられます。
もし、社内の人材育成・リスキリングに興味のある方は、導入してみてはいかがでしょうか。
人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」に関するご質問やご相談は、ぜひSATO社会保険労務士法人にお問合せください。
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