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【令和5年4月】雇用保険料率が引き上げられるのはなぜ?

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厚生労働省は、現在1.35%の雇用保険料率を、2023年4月から1.55%に引き上げる方針であることを明らかにしました。

雇用保険料率については、2022年に2段階引き上げられたばかりです。

では、なぜ今回さらに雇用保険料率が引き上げられたのでしょうか。

雇用保険料率の引き上げの理由、また、企業や労働者に与える影響などについて解説をします。


令和5年4月に雇用保険料率が1.55%に引き上げられる見通し


2022年12月時点で、一般の事業の雇用保険料率は1.35%となっています。

厚生労働省は、これを2023年(令和5年)4月から、1.55%に引き上げる見通しであることを明らかにしました。

雇用保険では、「失業等給付」「育児休業給付」「雇用保険二事業」の3つの区分を実施しており、現時点(2022年12月)での雇用保険料率は下記の通りです。

失業等給付
0.3%(事業主負担)+0.3%(労働者負担)=0.6%
育児休業給付0.2%(事業主負担)+0.2%(事業主負担)=0.4%
雇用保険二事業0.35%(事業主負担のみ)
合計1.35%

今回の引き上げでは、失業手当などの財源になる失業等給付が、現行の0.6%から0.8%に0.2%上がり、労使それぞれが0.1%ずつ負担することになります。

その結果、雇用保険料率の合計が1.35%から1.55%に引き上げられます。

令和5年4月に雇用保険料率が引き上げられるのはなぜ?

雇用保険料率は、物価や失業率などさまざまな要因を考慮し、定期的に見直しが行われていますが、今回の引き上げの最も大きな原因は新型コロナウイルス感染拡大とその長期化にあると考えられています。

そもそも雇用保険料率は、下記のとおり、新型コロナウイルス感染拡大前の積立金に余裕があったときに、暫定的に引き下げられていました。

平成22年1.55%
平成23年1.55%
平成24年1.35%
平成25年1.35%
平成26年1.35%
平成27年1.35%
平成28年1.1%
平成29年0.9%
平成30年0.9%
令和元年0.9%
令和2年0.9%
令和3年0.9%
令和4年(4月)0.95%
令和4年(10月)1.35%

しかし、新型コロナ感染拡大により、積立金が激減してしまったため、それまで抑えていた雇用保険料率を元に戻すことになったと見られています。

今回の引上げに至った具体的な原因としては、「雇用調整助成金の申請増加」と「失業手当の受給者の増加」があります。

雇用調整助成金の申請増加

新型コロナ感染拡大により、雇用調整助成金の財源がひっ迫しています。

雇用調整助成金とは、経済的な事情により事業を縮小した事業者が、労働者の雇用を維持するために、一時休業等を行った場合に助成する制度です。

2020年以降、新型コロナ対策として、雇用調整助成金の助成率および上限額を引き上げる特例措置が設けられていますが、長引く新型コロナの影響により、雇用調整助成金を申請する事業者が急増しました。

厚生労働省によると、2020年2月から2021年9月までの雇用調整助成金の支給決定件数は、441万2511件、4兆3481億円に上っており、リーマンショック後の4倍以上になっています。

雇用調整助成金の財源は、企業と労働者が負担する雇用保険料が基本となっており、財源強化のために、雇用保険料率の引き上げが必要になっています。

失業手当の受給者の増加

新型コロナによる失業者の増加も、雇用保険料率引き上げの大きな要因の1つです。

そもそも雇用保険の主な目的は、労働者が失業をした場合に必要な給付を行うことで、労働者の生活や雇用の安定を図ることにあります。

ニュース等で連日報道されているとおり、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、倒産や解雇等により失業してしまった方が多くいます。

その結果、失業給付等が増加したことが、雇用保険料率の増加につながっています。

そもそも雇用保険料率とは?

雇用保険料率とは、労使が負担するべき雇用保険料を算出するために用いる割合のことをいいます。

雇用保険料は、事業者と労働者の双方が負担をしますが、実際に納付する雇用保険料の額は、「毎月の給与総額×雇用保険料率」によって算出をします。

例えば、2022年10月に小売業の店舗で働くAさんの計算対象賃金が20万円であった場合、会社とAさんが負担する雇用保険料は次の通りです。

  • 会社が支払う雇用保険料=20万円×0.0085=1,700円
  • Aさんが支払う雇用保険料=20万円×0.005=1,000円

ちなみに、雇用保険料率は事業の種類ごとに異なり、一般の事業と比べて、農林水産業や建設業は高めに設定されています。

これは、失業手当や助成金を受ける割合が高い事業と、低い事業との公平を保つためです。

雇用保険料率は、失業手当の受給者数や積立金の額などによって、定期的に見直しが行われています。

年度更新時に注意が必要です

労働保険料(雇用保険料+労災保険料)の納付方法は、社会保険と異なり、年度更新という特別な方法によって行います。

労働保険は、保険年度(毎年4月1日~翌年3月31日)ごとに概算で保険料を納付し、保険年度末に賃金総額が確定したあと精算を行います。

そのため事業主は、前年度の保険料を精算するための手続きと、新年度の概算保険料を納付するための手続きが必要となりますが、これを「年度更新」といいます。

これまで説明したとおり、2023年度(令和5年度)の雇用保険料は現在の1.35%から1.55%に引き上げられる見通しなので、2023年の概算保険料の計算と、2024年の精算時は引き上げ後の雇用保険料率によって行わなければなりません。

年度更新業務は社労士の依頼が便利

年度更新には、雇用保険に加入している従業員のチェック、概算保険料の算出、従業員の賃金計算や申告書の作成等、非常に多くの手間がかかります。

しかも、「概算・確定保険料申告書」の提出期限は毎年6月1日から7月10日までとなっており、手続きが遅れると、行政が労働保険料を勝手に確定し、さらに追徴金が課せられる可能性もあります。

毎年行われる年度更新業務を効率化するなら、社労士の利用が便利です。

社労士は、社会保険手続きの専門家なので、必要な手続きはすべて丸投げすることができます。

また、長期間の顧問契約に抵抗のある方に対しても、その年の年度更新業務のみを代行してもらう「スポット契約」もあります。

もし、「年度更新に貴重な時間や人的リソースをとられたくない」「本業に集中したい」という方はぜひ、社労士をご活用ください。


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雇用保険料率の引き上げによる影響


雇用保険料率の引き上げは、事業者・労働者の双方に影響を与える可能性があります。

雇用保険料の負担の増加

当然のことですが、雇用保険料率が引き上げられると、労使双方が負担する雇用保険料が増加します。

例えば、月の賃金が20万円の場合、労使双方の負担する雇用保険料は2,700円から3,100円に増加することになります。

1人だとわずかに感じるかもしれませんが、従業員の多い企業では、大きな負担になります。

また、今後もコロナの影響が続いた場合には、雇用保険料もさらに引き上げられる可能性があります。

正規雇用の減少

雇用保険料率が引き上げられると、企業は雇用保険料の負担を避けるため、パートやアルバイトなどの短時間労働者を採用する可能性があります。

一定時間以下のパート・アルバイト従業員は、雇用保険の加入義務がないためです。

また、労働者側としても、雇用保険料の負担が増えると給料の手取り額が減少してしまうため、非正規雇用を選ぶ労働者が増える可能性が高くなります。

しかし、非正規雇用が増えてしまうと、雇用保険の財源がさらに減少し、結果的にさらなる雇用保険料率の引上げにつながるリスクがあります。

ご相談はSATO社会保険労務士法人まで

2023年4月から雇用保険料率が現行の1.35%から1.55%に引き上げられる見通しです。

引上げの理由としては、長引く新型コロナウイルスの影響により、雇用調整助成金を申請する企業や、失業手当の受給者が急増したためです。

現在、新型コロナの影響はやや落ち着きつつありますが、今後の状況次第では、さらに雇用保険料率が引き上げられる可能性があります。

担当者としては、最新情報をチェックし、早めに対応するようにしましょう。

雇用保険料率の変更や年度更新手続きについて、「もう少し詳しく知りたい」「社労士に直接相談したい」という方は、SATO社会保険労務士法人にお気軽にご相談ください。

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