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会社は従業員の副業・兼業を禁止や制限することはできますか?

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2022年7月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定され、労働者の「副業・兼業」が国家の政策として更に強く推進されることになりました。

今後、副業・兼業を始める従業員はさらに増えていくことが想定されます。

ただ、事業の種類や内容によっては、従業員の副業や兼業について、禁止・制限したいという会社もあると思います。

従業員の副業や兼業が、会社にとって不利益につながるケースも十分に考えられるからです。

では、従業員の副業や兼業を禁止・制限したいという会社は、どのように対応をするべきでしょうか。

今回は、従業員「副業・兼業」について、禁止や制限をすることができるのか、また、会社側が注意すべき点などについて解説をします。

会社が従業員の副業や兼業を禁止・制限できるケース


まず、会社の担当者が理解しておかなければならないのは、「労働者が労働時間外に、どのように過ごすかについては、基本的に労働者の自由」ということです。

そのため、会社は原則として、労働者の副業や兼業を禁止・制限することはできません。

ただし、下記の4つの場合には例外的に制限することが可能とされています。

1,労務提供上の支障がある場合

これは、従業員の副業・兼業により、長時間労働等が発生し、本来の業務に支障が生じてしまうケースです。

労働契約法第5条では「使用者は、労働契約に伴い労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする」とされており、これを安全配慮義務といいます。

従業員が副業や兼業で長時間労働が生じている場合に、会社が何の配慮もせずにこれを放置することは、安全配慮義務に違反します。

そのため、従業員の副業や兼業が、この安全配慮義務に抵触する恐れがある場合、会社は禁止や制限をすることが可能となります。

2,業務上の秘密が漏洩する場合

基本的に、従業員は会社の業務上の秘密を守る義務(秘密保持義務)を負っています。

そのため、従業員が副業や兼業により、自社の情報を副業先・兼業先で漏洩するおそれがあるような場合には、会社は副業や兼業を禁止したり制限することが可能になります。

例えば、従業員が副業先で自社の秘密を漏洩した場合に、その従業員に対して副業の禁止を命じる等のケースが考えられます。

3,競業により自社の利益が害される場合

労働者は、一般的に在職中は本業の会社と競合するような業務を行わない義務(競業避止義務)を負っています。

そのため、従業員の副業や兼業が競業避止義務に違反するような場合には、禁止や制限をすることが可能です。

ただし、この義務は使用者の正当な利益を侵害してはならないという義務である点に注意が必要です。

例えば現在、個別案件でコンペ中の競合先に副業として勤務し、その案件で本業の会社に不利益を与える場合は、禁止することが可能です。

しかし、副業先が同業種や同職種であっても、会社の正当な利益が侵害されるおそれがない場合には、禁止や制限ができない可能性もあります。

4,自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

労働者は、使用者の名誉や信用を毀損しないように誠実に行動する義務(誠実義務)を負っています。

そのため、自社の名誉や信用が侵害される恐れがある場合や、信頼関係が破壊される恐れのある場合には、従業員の副業や兼業を禁止・制限することが可能です。

例えば、副業先が違法性のある業務や反社会的勢力に与する仕事である場合、禁止または制限することが可能です。

労働者への周知はどのようにする?

副業・兼業の禁止や制限をする場合、トラブルを避けるためにも、事前に労働者に対して周知しておくことが重要です。

労働者に周知する方法については、就業規則等の社内規定に明記し、これを労働者に周知することが最も適切です。

このとき、上記で説明した副業・兼業を禁止または制限できる4つのケースも明記しておきましょう。

事前の届出制がおすすめ

従業員の副業・兼業については、事前の届出制がおすすめです。

事前に申請を受けることで、副業先・兼業先が禁止や制限の対象にあたるかどうかを会社が判断しやすくなるため、その後のトラブルやリスクを回避できるからです。

事前の届出制を採用する場合は、届出の期限や提出先等をルール化し、就業規則などに明記しておきましょう。

ただ、事前申請の許可規定を設けた場合において、それに違反したとしても直ちに懲戒事由に該当しないという点は注意が必要です。

懲戒事由に該当するには、「使用者に対する労務提供に支障が発生する」ことがポイントになりますが、事前の申請がなかっただけでは、それに該当しないためです。

副業・兼業をした従業員の労働時間の管理はどうなる?

労働基準法によると、「労働時間は事業場を異にする場合も労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定されています。

ここでいう「事業場」は同一の使用者ではなく、別の使用者である場合も含みます。

そのため、A社で働いている従業員が、B社で副業をした場合、労働時間の管理については、A社+B社で通算をすることになります。

その結果、法定労働時間である1日8時間、1週40時間を超える場合には、時間外割増賃金支払いが必要となります。

先ほどの例でいうと、A社とB社の所定労働時間を合算し、法定労働時間を超える部分の割増賃金の支払いは、時間的に後から労働契約を締結したB社が支払い義務を負います。

所定労働時間の長さで決まるわけではないので注意しましょう。

尚、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内という労働基準法第36条の上限も、労働者個人に紐づく規定であるため、各会社での労働時間が通算され判断されます。


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まとめ

働き方改革や、新型コロナの影響により、労働者の副業や兼業は、今後ますます増加すると考えられます。

ただ、会社としては、副業や兼業を禁止または制限したいケースもあると思います。

会社の担当者としては、どういう場合に、禁止や制限ができるのか、しっかりと理解した上で、会社にあったルールを設定し労働者に周知することが重要です。

また、副業や兼業が行われると、労働者の労働時間管理も難しくなるので注意が必要です。

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